「ニホンジカの目撃」



 2019年6月20日、脇野沢の国道338号脇の水田にニホンジカが佇んでいた。それも白昼堂々とだ。これまでに下北半島でのニホンジカ目撃情報は2008年頃から情報が出始め、一昨年の牛ノ首での情報までかなりの目撃がでている。

私も昨年のニホンザル調査のおりに、金木町南のダム湖で1頭の若いオスのニホンジカを目撃している。確実に青森県県内に広がっている実感をもっていた。

 今回目撃したニホンジカは角が二股になったオトナオスの個体で、しばらくは悠々としていたが、撮影の為に姿を見せると、水田を横っ飛びに移動して背後の雑木林に飛び込んだ。素早さと水田の中のジャンプ力には驚いた。いろいろな情報を聞くと垂直跳びで2mを越えるという。

また田植えした直後の「苗」を食害してしまい、米の収穫に大きく影響するという。わずかな観察時間だったがそれぞれの情報が頷けた。


 

 温暖化というところからさまざまな野生動物が北上を続け、分布を広げているという。そのなかには外来種のハクビシンやアライグマも含まれ、イノシシも青森県内ではかなり目撃されている。

このまま進行すれば青森県内の野生動物の分布に変化が生じ、バランスが変わってくる。食害についても新たな問題は発生し、食害を受ける地域も広がるだろう。

さしずめ青森県の基幹産業であるリンゴ栽培は大きな転換期にむかえ、場所によっては死活問題にまで発展するだろう。またリンゴについてはすでに温暖化の影響も受けて、寒暖の差による高品質のリンゴ栽培が難しくなる方向にあり、そこにニホンジカによる食害問題も新たに加わることになる。

もっともリンゴ食害はニホンザル等による食害問題が既存しているが、さらなる食害も、ということになる。下北半島の場合は、リンゴ栽培がなく、農作物や林木被害ということになるが、実際にフタをあけてみないとわからない。





 7月のはじめ、ニホンジカ目撃のあった水田の耕作者から電話があり、ニホンジカがその後も目撃されたとのこと。食害も発生しているとの報を聞いて現場に出向いてみた。

表現は適切ではないが見事な痕跡が残っていた。6月に目撃した水田の中央部に円弧を描くようにイネが食べられていた。周りの水田には侵入の痕跡もなく、集中した食害痕跡だった。北限のサルやニホンカモシカではみたこともない食害が、そこにはしっかり残っていた。



ニホンジカ対策として、すでに後手後手という状況になっているような、嫌な感覚が、残り香のように水田にただよっていた。





いそやまたかゆき

2019.07