~下北半島のニホンジカ~
大畑町の保育園(写真提供、大畑支所)

 2017年10月24日夕方、我が家に1本の電話が入った。電話主は寄波にすむ知り合いからで、集落の県道脇を歩くニホンジカを見たという。角の先端が二股に分かれており、ニホンカモシカではなかったと自信ありげに喋った。

 翌日、寄浪から牛ノ首の周辺を調査してみたがニホンジカを目撃することができなかった。しかし、聞込みをしてみると他にも目撃者がいて、サル巡視員の彼は、同日の午前中に寄波周辺でオスのニホンジカを目撃しており、少し前に蛸田地区でも目撃していた。

さらに他地域の情報を整理してみると、9月に東通村の尻屋崎灯台付近で1頭目撃され、10月16日に隣の佐井村で2ヶ所、2頭のオスのニホンジカが目撃されていた。

今回、脇野沢で目撃された個体は特徴から尻屋崎、佐井村と同じ個体の可能性が高く、9月から10月にかけて1頭のオスのニホンジカが下北半島を反時計方向に移動したことになる。
 


大間町キャンプ場(写真提供、大間町)

 過去の下北半島のニホンジカ目撃は、2008年3月にむつ市大畑町の保育園、5月にむつ市郊外の牧場、10月14日に大間崎のキャンプ場、19日には脇野沢の口広林道でオスのニホンジカが目撃されており、この時も下北半島を反時計方向に移動している。

また、2009年8月5日にむつ市大湊の港湾でも別の個体が目撃されているが、メスの目撃や定住性を伺わせる情報はまだない。

 近年、青森県内においてニホンジカ目撃は増加の一途をたどっている。白神山地周辺の深浦、鯵ヶ沢周辺では昨年対比の目撃数が倍増だという。メスの目撃もでている。

2015年には津軽半島の外ヶ浜町でオスのニホンジカが目撃された。とりわけ世界自然遺産の白神山地では目玉となっているブナが食害を受けるだろうと、関係省庁では捕獲のための事業を計画している。




外ヶ浜町のニホンジカ(写真提供、外ヶ浜町)

 地球温暖化。この言葉が叫ばれて久しいが、北上を続けるニホンジカ情報を地元で聞くと、あらためて現実となってくる。いろいろな懸念が浮上する。食害問題だけでなく同じ生活環境をもつニホンカモシカとの共生はあるのか? もし競合した場合、群れで生活するニホンジカの方が優位になるだろうが、具体的にどんな住み分けが行われるのだろうか? 

地球温暖化は私たち人間の生活環境変化だけでなく、自然界でも様々なところに及んでくる。

 下北半島のカモシカはこれまで競合相手がおらず、仲間内だけで悠々と暮らしてきた。ニホンジカが定住しはじめると「追われる側」の立場になり、非力な彼らは生活環境の悪い山頂周辺や崖っぷちに移動を余儀なくされるだろう。

しかし、ニホンジカが生活環境のよくない下北半島に定住するのだろうか。
 案外、下見だけで終わるのではないか、という気もするが・ ・ 。



いそやまたかゆき

2017.12