~牛ノ首物語・新しい家族~
薮にかくれるパールとこども
 
  秋の装いがはじまりかけた2017年10月19日、牛ノ首の歩道を散策していたら、ピーク付近の薮の中に1頭のカモシカを見つけた。葉の陰に隠れて確認しづらかったが、時間をかけて観察したら「パール」だった。ふと、足下に小さな塊が動いた。

「青天の霹靂」という米の銘柄が青森県にあるが、まさのその言葉がぴったり。塊はこどもだった。驚きもいいところ。

 パールは2015年生まれで今春ようやく2才になったばかり。カモシカの出産は通常3才からはじまり、これまで誰にもそう喋ってきた。おまけにこどもはまだ幼く、春に生まれたとは思えない。

ほとんど見えていない角の成長具合から推定して生後せいぜい3~4ヶ月。パールを7月下旬に観察した時はこどもはおらず、推定すると8月初旬の出産となる。そのうち、こどもはがそわそわしはじめ、海岸側の斜面に向かって走り出した。

それを見たパールも後を追うように姿を消した。観察時間はわずか5分間だった。


階段をのぼるパールとkoパール

 この日のパール親子の観察から、記録と写真を逆算させながら考察してみた。昨秋の交尾時期にパールがオスカモシカの「シアン」と一緒に行動していた。

しかし、交尾に関する交渉は全くなく、人間的に言うと一歳年上の「兄」が幼い妹を保護している印象だった。年が明けて3月、この日もパールがシアンと一緒に歩きながら採食していた。

仲むつまじい雰囲気だったが、この時もシアンがパールを保護している行動に終始し、交尾交渉に関する行動はなかった。これらの期間、パールがつがい関係を持ちそうな新しいオスの存在は皆無だった。つまり、シアンとパールは兄妹という関係でしか観察していなかった。

 この日の観察はその他にいろいろなことを考えさせた。パールが連れているこどもが、パールの母親である「グレー」のこどもで、パールが「子守り」的な役割を務めているのだろうか? 

グレーが出産後に死亡した等、何か悪い事が起きているのだろうか? カモシカの世界では珍しいことではない。また、何れにしても父親は誰なのか? さっぱり事実がわからなかった。


途中で現れたシアン

 その後一週間かけて牛ノ首を調査した。26日に再びパール親子に出会った。追跡してしたら途中でシアンが絡んできて、パール、こども、シアンの3頭が一緒になって行動した。

その後もパール親子を二日間観察できた。グレーの姿はまったくなかった。
 一連の調査から、パールは2才の夏にはじめてのこどもを出産し、父親はシアンだと結論した。

そしてこどもを「koパール」と命名した。小さなパールという意味を含んでいる。牛ノ首の新しい1ページが開いた。



いそやまたかゆき

2017.08