~北限のサル・沿革4~
キツネに驚いて逃げ惑うサルたち(撮影09年3月20日:瀬野)
 
2008年、脇野沢地区に二頭のモンキードッグが導入された。犬種はジャーマンシェパードで「サルを追う」訓練を受けたプロである。名前はオスの「ゴン太、メスは「ハナ」である。仕事は追い上げを担当していた巡視員の助っ人になり、ハンドラーと称された主人の命令で畑地等に侵出したサル達を山の中まで追い込んで行く役割。

そして号令が出れば戻ってくる。かなり訓練を受けたドッグである。巡視員たちの車には「モンキーポリス」と銘打ったステッカーが貼られている。 サルたちの様子はというと、それはそれは、徹底して逃げた。時間が経つと巡視員達の車を見ただけで、さっさと山の方に移動した。

今まで追い上げに使っていた「花火」・「パチンコ」・「モデルガン」以上の効果だった。これまでの追い上げの課題は、サル達の逃避が一時的避難だったので、巡視員達がいなくなるとサル達は畑周辺に戻ってきていた。


モンキードッグの「ハナ」(撮影12年8月16日:田ノ頭)

巡視員たちは時間で仕事を終えるので、サル達はそれまで辛抱していたのであるが、モンキードッグの場合は戻ってくることがなかった。しかしながらサル達は別の場所に移動するので、そこに巡視員達は先回りして、またモンキードッグを仕掛けるといった手法を繰り返した。

その為に群れのメスに発信器を取り付けておくのである。メスは群を生涯出て行かないので、結果、群れの居場所を知らせることになる。一度、山中で面白い後継を目の当たりにした。群れを観察していたら突然、「クゥワン、クゥワン」「ギャッ、ギャッ」と激しい鳴声が群れの中に広がった。

サルたちは鳴声によって危険を知らせるのだが、ここまで激しい警戒音を聞いたことがなかった。サルたちはあわてて逃げ惑い、木に登り、クモの子を散らすように拡散した。こちらも何が起きたのか分からなかったが、しばらくすると一匹のキツネが群れの中を走り抜けていった。

サルと「ハナ」を連れた巡視員(撮影11年2月13日:本村)

キツネがサルの群れの中に入り込んで右往左往している様子をみたサルが、モンキードッグと勘違いして警戒音を発して群れ全体に異常警戒が広がったのだ。

サルたちにモンキードッグの「危険」が確実に刷り込まれていたのだ。やはり犬猿の仲なのである。この犬猿というのは「桃太郎の家来」のイヌとサルではなく、野生の犬と猿のことなのであろう。

少なくともペットとしての犬の存在はなかった。この時期、脇野沢のサルたちは畑をみつめるだけで、巡視員とモンキードッグに追われ、山の中に押し戻された。

この手法は、農作物被害を軽減させ、人とサルとの共生の着地点が見え始めたかと思われた。


いそやまたかゆき

2017.07