「北限のサル・~納涼~」
 

 夏がやってくる少し前、川内川渓流でサルの群れに出会った。アジサイ橋のたもとに大きなオスザルをみつけ、周りの様子をうかがっていると「キュッ」、「クウィッ」とサルの鳴声が両岸から聞こえる。

そのうち若いサルが姿を現し、浅瀬の飛び石を使って器用に川を渡りはじめた。そのうち川岸に3頭の若いサルがでてきて、1頭がそうっと川に入りはじめた。そして慎重に泳ぎはじめた。泳法は「犬かき」だった。しばらく様子をみていると、サルたちは川を渡るのが目的ではなく、水場で遊ぶのが目的だった。

気がつくと、上流の崖にも親子が座り込み、下流側にも別の親子が水際に座り込んでいる。みんな涼しい場所をみつけて涼んでいるのだろう。はじめに見つけたサルは橋の欄干からひたすら見下ろしている。渓流にかかる橋の上は風が吹き抜けて、ここもまた涼しい。

世界で最も北にすむサルたちは、寒冷地に適合するようになったが夏の暑さには弱いのだろう。




  ちょっと雑木林に入ってみた。すぐに「ガサガサ」と物音がして、1頭のサルが走って木の上にのぼった。目に敵意をこめて見下ろしている。その背後にうごく物があったので双眼鏡を使って調べると、1組の親子が太めの枝に座り込んでいた。

しかし、母ザルの目には敵意はなく、ぼうっとこちらを眺めている。ざっと見えたサルの数は19頭で、そのうち春生まれのアカンボウが3頭いた。お昼を過ぎたあたりから少し群れに動きがではじめた。川岸にいるサルたちが下流方向に歩きはじめた。飛び石を渡るサル、岸辺を歩くサル、土手近い藪をかき分けるサル・・。

みんなそれぞれの想いがあるのだろう、バラバラに移動している。しかし歩きながら何かをつまんで口に放り込むのは共通の行動。サルたちの行動様式を「遊動」と呼んでいるが、うまい表現だと思った。

食べるのではなく遊びながら食べ物を探すのである。そして夏の暑さを逃れながら空腹を満たすのである。




気がつくとサルたちは土手をのぼって道路に出ていた。ちょうどその時に友人がやってきて群れのサルを数えてくれた。全部ではないが50頭までカウントできたとのこと。アカンボウが6頭。

けっこう大きな群れだった。観察した群れは最近このあたりに姿をみせ、下北のサル分布が拡大していることを裏付けることにもなっている。下流の市街地まで数キロの場所。渓流の納涼ザルだけでとどまっていてくれるといいのだが、たぶんそうも行かないだろう。

 地球温暖化だけにとどまらず、自然環境のバランス変化は確実に進んでいる。


いそやまたかゆき

2016.08