「ピンクのカタクリと緑色のフン」
 

春がきた。北限のサルたちは待ちこがれたように新芽を食べあさる。イタヤカエデ、イワガラミ、フキ、オオバクロモジ・・、手当たり次第に頬張る。長い冬を乗り切った勲章を貰うように、喰う。

 前日、蛸田地区のブナを食べたサルたちは隣の寄浪に移動。沢筋を丹念に歩いて寄浪神社まで移動。一晩過ごして翌日、集落背後の雑木林に広がった。ふとみると1匹のアカンボウが誕生していた。10才くらいの若いメスが母親。こどもの抱え方がまだすこしぎごちない。

母ザルは、小さな沢をこえ、日当りのいい斜面を歩き、上を見上げていたらスルスルと樹に登った。



 イワガラミの新芽を頬張りはじめた。こどもはじっとお腹にしがみついたまま。先端の芽吹いた柔らかな葉っぱを片っ端から食べる。片手はこどもを抱え込んでいるので、不自由そうだが、とにかく食べまくる。まわりをキョロキョロしながら食べ終え、次の樹に移る。そしてまた食べる。

 食べ終えるとようやく樹からおりて、小さな尾根を登りはじめた。途中で何度も休憩してかなり上がって行った。座ったあとをみると見事な緑のフンが残っていた。色から推測すると、ひたすら新芽を食べていたのだろう。冬のカチカチの真っ黒なうんちとは大違い。

周りには可憐なピンクのカタクリが咲き始めていた。サルたちは見向きもしなかった。花より団子、いやイワガラミだった。


 この群れは昔、ツツジ、スズラン、カキラン、モミジたちがいた群れの残党。オスではシャチ、カナガシラ、悪いサルにはゴンズイというのもいて、分裂、捕獲作業を経て現在に至る。群れの人慣れ度、被害度などのレベル審査の結果、捕獲対象の群れとなって今も捕獲作業が続く。

しかし、春の到来から山の芽吹きが増してくる今、農作物に依存しなくても生活が出来、追われる畑に侵入しなくてもいいわけで、このまま山暮らしを続けてくれればと、思う。

 カタクリのピンクと緑色のフン。そして新しい命の誕生。この取り合わせは春しかできないわけで、いつも春だったら・・などと、妙に夢みたいなことを考えてしまう。しかし何はともあれ、春はいつ味わってみてもいいもんだ。



いそやまたかゆき

2016.04