「西目屋村 ~夏から秋へ~」
 
 平成25年度からはじまった「岩木川上流地域ニホンザルモニタリング調査」もいよいよ最終年となった。フィールドは西目屋村と旧相馬村の弘前市。面積は630km2という広大な広さ。岩木山の南西山麓も抱え込んだ白神山地のお膝元でもある。

 今夏、最後の調査として食害時期に様子をみにいった。リンゴは津軽の早生が収穫時期、他の種類も袋が被せられたりしながらあちこちに実っている。

まさに鈴なりだ。この時期のニホンザルの生活は、森に食べ物があまり良くなく、どうしても農地周辺に依存が高まり、ここ西目屋村ではリンゴ園の周りを行動する。そして食害もする。



 調査は3日間実施したが、どこに行ってもサルたちの姿がない。サルたちがあまり行動しない真っ昼間に調査することは、観察が難しいことをはじめから承知したいたものの、とうとう3日間でハナレザル1頭だけを目撃するだけに終わった。

あとは沢のなかに、サルの鳴き声と走り回る水音だけだった。どこを探しまわっても、姿はおろか、気配もない。りんご園周辺に食害されたリンゴも見当たらない。 しかしながら、ちょっと沢筋を調査してみると、ミズナラ、コナラ、ミズキ、ウワミズザクラ、ツノハシバミ、ヤマブドウ、ガマズミなどの実がたくさんついている。

今秋は豊作になりそうだ。大実りの秋だろう。つまり山では、夏が終わり、秋がはじまろうとしているわけで、サルたちはそんな時にリスクを冒してりんご園や農地周辺をウロウロする必要があるのだろうか、と思った。


調査前に、夏=食害というイメージを持ち、農地周辺のサル観察をしようと思った我々は、少し論点がズレていたのかも知れない。自然を相手にする場合、やはり実際にその場所で現実を体験する必要がある。

いい教訓になった。 ヒマワリが咲き誇り、マムシが這いずり、ヨモギが成長し、アカトンボが水田を飛び回り、ガマズミが瑞々しい実をつけ、そしてリンゴが赤く染まり、耳を澄ますとコオロギの音。

夏はいつの間にか秋に染まりはじめていた。 西目屋村のサルたちはどんな秋を楽しむのだろうか。そして下北半島の北限のサルたちも秋を待ちこがれているのだろう。季節は確実に動いている。


いそやまたかゆき

2015.9