「T-13の成長」

1才のT-13
 
ティー・サーティーンと呼びます。昔、ゴルゴ13(サーティーン)という凄腕の殺し屋がいましたが、まったく違う語源です。ただちょっと名前をつける時に「困った」挙げ句の末でもありますが・・。

 このカモシカの性別はオス。産まれた年が2013年。その年の秋に性別が判明し、いよいよ名前をということになりました。父親が「ロク」(2006年誕生)、母親が「ナナ」(2007年誕生)というこの場所の名前はすべて「数字」に限定しており、13という数字の名前を考えたとき、ふっと殺し屋の語呂が浮かんだのです。

そしてさらに晩秋にテレビ取材があり、その時のレポーターが「田村」という女性だったので、ちょっといじってこの名前に決定したのです。蛇足的に6+7=13になります。説明が長くなりました。
1才半のT-13

 4月、投票に行った帰り道、ようやく春が定着した脇野沢川の歩道に「T-13」の姿がありました。周りには誰もおらず、芽吹いたばかりのヤナギの葉に見え隠れしながら、ひとりで採食していました。

様子をみて、しばらく居そうだと思って、カメラを取りに戻って引き返し、観察をはじめました。接近するとT-13は、採食をやめ、ちょっと警戒。昨秋に観察して時にはまだあどけない雰囲気が残っていましたが、冬を越えた顔立ちはすっかりおとなのカモシカでした。

成長ははやいものです。T-13の警戒はとけ、すぐにまた新芽を食べはじめ、こちらを無視しはじめました。ヤナギの新芽を食べ終えると次は地面のフキの葉をむしりはじめ、残っているふきのとうもパクパク。
 そのうち早足になり、スギの林縁まで移動して、ササ原のなかに身を潜めました。食べる物は食べたというところでしょう。

ニホンカモシカという動物の習性は、とにかく身を潜めて「存在」を消して「身を守る」というタイプです。「敵」が通り過ぎるまでじっとするのです。攻撃にでるタイプではなく、つねにディフェンスのなかで生活します。ある程度人に慣れているT-13でも、やはり本能としては安全のために潜むのです。

そして、歩道脇の急斜面を登って、道路を横断し、本拠地でもある「山」に戻って行きました。
2才になるT-13

 半年ぶりの再会でした。しかし、その半年の時間はT-13は大きく成長させ、逞しくなっていました。しかしその成長は、これからカモシカとしての自立の時を迎え、ナワバリを確立させなければなりません。今春以降、父親のロクとは競合の関係になります。追うか、追われるか、大きな試練が待ち受けます。見た目にはのんびりした雰囲気とは裏腹に、T-13の心中は穏やかではないのかも知れません。カモシカの世界もなかなか大変です。


いそやまたかゆき

2015.4