「白神山地のニホンザル」

 
昨年から青森県の依頼で西目屋村周辺のニホンザル調査をやっている。西目屋村は弘前市の西に位置する人口1500名程の小さな自治体で、岩木川の源となる暗門の滝を有する自然豊かな村である。10年前から目屋ダムをかさ上げする「津軽ダム」工事が進み、8月に本体が完成した。調査地域は西目屋村に隣接する弘前市(旧相馬村)の一部を加えたところである。

 西目屋村の基幹産業は「リンゴ」であり、村を取り囲むようにりんご園が広がっている。その延長上に白神山地があるが、農作物被害を受けやすい環境になっており、あちこちに電気柵の設置も見受けられる。被害を受ける動物は「クマ」「ニホンザル」「ウサギ」「アナグマ」「キツネ」等で、近年は「アライグマ」「ハクビシン」と帰化動物まで畑地やりんご園に侵入している。昨年は「ニホンジカ」も目撃されており、白神山地のお膝元は賑やかになっている。


 今夏の調査は情報収集が主だったが、群れ目撃もあり、実りあるものだった。一般的に葉がおい茂っている夏の動物観察は不向きなのだが、調査中にりんご園脇の雑木林で「活動する」群れと遭遇した。

偶然、農家の人が被害を防止するために「花火」を使って「追い上げ」をした直後に通りかかり、3時間程、観察できたのである。りんご園は、集落と山との中間にあたるいわゆる山麓を開墾してリンゴの木を植栽しているのだが、周りの沢筋には杉や雑木が林となって奥山とつながっている。

クマやサル達はその林を移動や隠れ場所に利用しているのである。ラジオを大きな音で鳴らしながら作業していても、なかなか侵入を食い止められないようである。また、人気のない早朝と夕方あるいは園地を留守にする昼食時に侵入が集中したり、なかなか敵もさるものである。もちろん、人間側も手をこまねいているわけでなく、さまざまな方法を使って被害防除を図りながら共存をすすめているとのことだった。


 下北半島の国の天然記念物の北限のサルとの違いはまずその部分。文化財保護の対象となるサルとただのサルとの違いでもある。白神山地は世界遺産登録20周年となるが、その周辺の山々にすむ野生動物は「単なる動物」なのである。しかしながら、観察してみると「サルは同じサル」であり、雪国に暮らすサルたち同士、同じ雰囲気をただよわせていた。

青森県には下北半島地域個体群、白神山地地域個体群の他、津軽半島地域個体群と3カ所に大きな生息地域が存在している。ちなみに、秋田県、岩手県にはニホンザルの生息地域はなく、青森県はニホンザルの生息地域として貴重な「地」であると思った。問題は私たち人間との軋轢、被害問題だと思うが、やはり人間側が知恵を出して共存・共生を図る努力をすべきなのだろうと思う。



いそやまたかゆき

2014.09