「モミジ・新春」

枝を拾うモミジ(13年1月3日:瀬野地区)
 
 「モミジ」が生まれたのは1993年6月。当時、母親の「ツツジ」は23才で、人間年齢相当70才になる高齢出産もいいところだった。ツツジに抱かれ、小さな指を伸ばしたモモジの手はまさに「紅葉」のようで、迷わずこの名前をつけた。モミジはツツジの四女にあたり、長女の「ヤマツツジ」は97年に死亡したものの、86年生まれの次女「スズシロ」、89年生まれの三女の「カエデ」(幼い頃はイモムシと呼ばれていた)の三姉妹は現在も健在。

 モミジはツツジの最後のこどもにもなり、溺愛と思われるほど可愛がられ、2001年のツツジの死後、モミジはツツジの地位を後継して群れのαメスになった。はじめのオスザルの相棒は「ハモ」。なかなか見栄えのする格好いいαオスだったが、07年頃に現在のαオス「ホッケ」と入れ替わり、現在に至っている。 13年正月、モミジたちは久しぶりに私の住んでいる瀬野地区の山林で新年を迎えた。今冬は、寒の入りの前から強い寒気団が居座り、モミジたちはほとんど移動せず、冷たい北風をさけることが出来るスギ林を利用して、長期滞在していた。

3年前に群れが分裂し、母群となったモミジたちの群れは東に行動域を拡大し、古巣である瀬野地区を離れることが多くなった。サルたちにはサルたちの事情があるのだろうが、ニホンザルには、私たち人間ほど故郷という土地に執着がないのかも知れない。

毛づくろいを受けるモミジ(12年11月5月:田ノ頭地区)

  モミジに新年の挨拶に出向いた。当日は、気温があがらず、10時を過ぎてもスギ林から誰も出てこなかった。起きてこないのである。上空は、強風が渦巻いてすごい音がしていたが、彼らの泊り場である森の中は、静寂そのものだった。サルだけでなく、草木も何もかもじっと眠り込んだままだった。

 そのうち、こちらの気配で起こされたのか、サルたちが姿を現してきた。ふと、背後に気配を感じた。モミジがアカンボウを抱えながら、雪をラッセルしながら歩いてきた。いつもはオスザルにラッセル役を押し付けるのに、珍しいこともあるもんだ。アカンボウのこともあり、お腹が空いているのだろう。目の前で小枝を拾ったモミジを撮りながら、「おめでとう」と声かけしたが、無視された。それどころではないのだろう。さっさと行ってしまった。

 昨秋、不運にも3才になるこどもを輪禍で失ったモミジだが、そんな様子は微塵も感じさせなかった。抱えているアカンボウの冬越しに手一杯なのだろう。モミジはマルバアオダモの高木の真ん中に陣取り、ひたすら冬芽と樹皮をかじっていた。 今年20才になるモミジは人間年齢でいうところの還暦。モミジにとって2013年はどんな年になるのだろうか。