牛ノ首物語7
「癒しの牛ノ首岬」

 
 牛ノ首岬を訪れる人々はさまざま。自然散策が好きな熟年夫婦、こども連れた家族、外国人のペア、学生、グループや一人旅など老若男女。地域柄、メディア関係者も多く訪れる。東京から15年間通っている女性がいる。彼女は大きな一眼レフを首と肩にぶら下げ、スポーツで鍛えた体力に物を言わせてどんな斜面でもガンガン登る。何度も「カモシカに警戒されるから、もう少しゆっくり」とブレーキをかける。しかし彼女は、「早く会いたい」、「ここにくると元気になるのです」とますます速度があがる。「前日まで残業続きでバテ気味です」と喋った言葉はどこ吹く風。出会ったら興奮のるつぼ。またたく間にカモシカは姿を消す。「あー、行っちゃった」。でも彼女は満足げに一言。「やっぱりここは気持ちがいい」。外国人の来訪者。かれらの目的は自然散策。とにかく歩くことが好き。コース紹介はいつも牛ノ首岬。情報誌で「北限のサル」のことは知っているがニホンカモシカは大変。いくら説明しても理解出来ず、最後はウシになってしまう。良くてせいぜいヒツジである。しかし「科」の違うニホンジカよりはましで、アバウトで終えている。かれらに感心するのは雨が降っても平気。カッパを着込んで雨もろとも楽しんで帰ってくる。そして必ず「ビューティフル!」、「ワンダフル!」で締めくくり。牛ノ首岬は国際親善大使になっている。

 
正月早々、おばあちゃんが孫を二人連れて来たことがあった。「自然観察がお年玉」と聞いた私は牛ノ首岬へ同行。安全性、動物の遭遇率を考えるとここしかない。こどもたちは雪の上を歩くサルを見て、「歩いてるー」と大喜び。カモシカの足跡からは生活の様子を勉強。宿題が出来たと喜んだ。そして足跡を一生懸命追跡してカモシカ親子に遭遇。牛ノ首岬は素早しいお年玉になった。10年前、牛ノ首岬で一緒にカモシカ親子を観察した友人の女性記者。彼女は温暖化の取材で地球を飛びまわり、4年前は南極越冬隊に参加。帰ってから地元小学校で南極の出前授業をやってくれた。そして今年再び「しらせ」に乗って南極に向かった。観察した当時の母親「クロ」はすでに他界、こどもの「グレー」がベテランの母親になっている。ともに10年の歳月が流れ、グレーも彼女も成長した。牛ノ首岬を南極と比較するのは変だが、同じ地球上の自然。物差しの単位が少し違うだけである。牛ノ首岬は、春は新緑や山野草、夏は海風が心地よく、秋は山の彩りを楽しみ、冬は足跡追跡のアニマルトラック。年間通して誰でも楽しむことが出来、さまざまな人々にそれぞれの癒しを与えてくれる場所である。