「水中の鳥瞰図」


 森には山と谷がある。言葉を換えると尾根と沢である。鳥が空を飛びながら見下ろすことを鳥瞰と言う。空中から風景を俯瞰するのである。先日、別の世界で同じ言葉を耳にした。
 脇野沢の隣の川内町で「海と森ふれあい体験館」を首謀する館長さんの言葉である。彼は、水生生物を学び、むつ湾に生息するむつサンゴが縁となって川内に在住し、現在に至る。出身は山形県である。彼は調査で海中をシュノーケリングをする時、水中
眼鏡を通して海底を見る様が鳥瞰だという。水中には岩があり、砂地があり、岩が山で砂地が谷だと言い、海中の風景は鳥が空中から山や谷を見下ろしている鳥瞰と同じで、さらに水性生物を発見して下降する様子が、猛禽が野山を駆け巡るウサギなどを
発見して急降下する様子と同じだと言う。さしずめ、海中を漂っている姿は、猛禽が空中をホバーリングしている様子を同じなのであろう。そしてその鋭い視線は「鵜の目鷹の目」だと言うわけである。


 この話は、私が5年間続けているFM番組「サルの目カモシカの目〜森の中で〜」で対談をお願いしたおりに出た言葉である。話を聞いた私は面白い視点だと思った。下北半島は文字通り半分が島である。つまり半分が海であり、その海も4種類ある。東が太平洋、北は津軽海峡が流れ、西には平舘海峡があって日本海から黒潮が流れ込み、南にはむつ湾がある。4種類の海に囲まれ、植物層も多様で、独特な下北半島の動植物相
が存在している。そして多様な海洋生物がいると彼は熱っく語った。さらに、海からサケが川を遡上し、それを食べた鳥が糞を森に落とし、むつ湾の栄養素を森に還元しているとも語った。つまり下北半島の森、川、海のつながりは水系で見事に繋がっていると締めくくった。

 下北半島には森や動物や鳥類を語る人は多いけれど、水生生物を語る人がいない。半島としてはバランスが悪かった。が、彼の登場で森と海の繋がりが深くなりそうだ。これからさまざまな水系繋がりの活動が具体化して行くだろう彼の活動に期待せずにはいられない。森の中で、サルの目カモシカの目の視点で物を語ってきた私にも強烈な刺激になった。下北半島はまだまだこれからという気がしてきた。