「間違いの冬」
岩の上に立つグレー親子
花咲いたフキノトウ:撮影07年1月10日

 今年の冬はあちこちから「暖冬」「小雪」といった声が相次いだ。脇野沢においては昨年12月初旬、2日間で40センチを記録した降り始めの雪も、結局、それっきりだった。年末から年始にかけて地肌をさらしていた冬もようやく9日、少し積雪があって、やっとの思いで冬景色らしくなった。
 1月10日、牛ノ首農村公園を歩いた時、あちらこちらで雪のあいだからフキノトウが顔を出していた。もともと雪の下で冬の間じっと辛抱しているフキノトウだが、今年は違った。花が咲いているのである。それも終わっている。いわゆる頭(とう)が立っているのである。このあたりでは「バッケ」といって美味しく食すのであるが、こうなっては芯がが硬くなって美味しくなくなる。たぶんサルやカモシカも食べないだろう。推論すると12月初旬に冬らしい日が続き、しばらく雪の下で辛抱していたフキノトウが、年末年始の暖気で雪解けし、しばらく続いた暖かな陽気で春の到来と勘違いし、自分のすることをしたまでのこと。私たちのカレンダーとは関係なく自らの植物カレンダーに従った結果、1月に「頭の立ったフキノトウ」の出現となったのであろう。間違ったのだ。

愛宕山の「六平」:撮影07年1月16日
暖冬のもたらす効果は、まず雪国の生活は楽になり、足回りが軽いので冬場のフットワークが快調になる。普段出来ないことが出来るのである。極端な話し、外での大工仕事さえ出来た。屋根の雪下ろしも一度もやらずに済んだ。こんな楽な冬越しは20年目ではじめての経験。しかし反面、スキー場では表層雪崩が発生して死傷者が出た。暖冬による自然災害が起きた。草食動物たちも楽な生活が続いているが、里付近での生活が多くなり、冬眠しない(出来ない?)熊が何頭か捕獲された。昨年、1月から3月まで週の半分くらい愛宕山で暮らしていた二ホンカモシカの「ヨノジ」と「六平」の姿も、1月に3度、オスの「六平」だけが我が家の玄関訪問と愛宕山詣でをしただけに留まった。昨春こどもを出産した「ヨノジ」はまったく姿を見せない。姿を隠して奥山で生活できることはカモシカ達にとってはいいことだ。小雪の今年は子育ても楽だったろう。長いスパンで自然の尺を考えると、このような暖冬も半世紀か一世紀に一度起きる現象だなのだろう。しかしこの頃はあまりにも暖冬、地球温暖化といった言葉が多く、そうそう手放しでは喜んではいられない。難しい注文だがやはり冬は、少しピシッとした時もあって、ようやくやってくる春の到来が嬉しく思う。気持のけじめがつくというものだ。自らの体力の衰えを考えずに身勝手な話をしたが、出来る限り、自然と対峙する気持と力を持ち続けてゆきたいものだと想う。