牛ノ首物語

「集中豪雨」
土砂崩れした牛ノ首:撮影2005年9月20日
牛ノ首物語はあしかけ6年になる。合併後のむつ市脇野沢の名称にも違和感がなくなり、新たな歴史が刻まれはじめた。自然界に見新しいことがいつもあるわけではないが、目線を少し変えてみると、別のものが見えてくることがある。森の中で、サルの目カモシカの目になって、5回目の牛ノ首の物語をまとめてみた。

 2005年9月18日、脇野沢地域は集中豪雨に見舞われた。この時は本当にバケツをひっくり返したような雨が降り続き、国道の一部で冠水、海岸側の県道では土砂崩れが起きて、あちこちで道路が寸断された。
 牛ノ首でも被害が出た。駐車場のトイレ上の斜面が大きく崩れ、立木もかなり倒れ、入口まで土砂が流れ出ていた。保水力が持たなかったのだろう。あとで調べるとこの日は400mmの総降水量、最高1時間に190mm。記録的な集中豪雨だった。牛ノ首は大怪我をしたのだ。
 そんなわけで、牛ノ首農村公園駐車場は閉鎖になり、しばらく入口にロープが張られたままだった。いわば牛ノ首の入院。さいわい歩道や動物たちは影響を受けず、時折やって来る北限のサルたちも涼しい顔をして、いつもの生活を続けていた。かれらにすれば土砂崩れは珍しいことではないだろうし、むしろえぐり取られた場所に若い植物が生育して、新しい餌場が増えた程度に考えていることだろう。自然に生きる動物たちの逞しさはそんなところにある。
修復工事の横でクローバーを食べる群れ:撮影2006年2月21日
 冬になっても駐車場は開放されず、入口には除雪された雪がうず高く積まれ、今度は壁が出来上がった。観察の時は空いている僅かな場所に車を置いて、雪山を乗り越えて牛ノ首に入った。
 2月になると、入口のロープが解かれ、斜面補強工事の関係車両が出入りし、久しぶりに牛ノ首に活気が戻った。土砂崩れ場所は痛々しく、降り積もった雪がまるで包帯、工事関係者が手術を執刀するドクターにみえた。さしずめ並んだ重機が手術道具。
 2006年2月21日、牛ノ首に群れがやってきた。サルたちは雪が融けた芝生に座り込み、好物のクローバを探すのに夢中。傍らにはショベルカー。背景には夕陽に染まる鯛島。しかし三者とも互いの存在は眼中にないと言ったところ。不思議な風景だった。
 集中豪雨から半年。母親代わりの鯛島が見守る中、牛ノ首の大怪我はようやく手術を迎えた。ひょっとするとサルたちは、身内として立ち会いに来たのかも知れない。どこからかカモシカ達も眺めているに違いない。牛ノ首は芽吹きの頃には退院出来そうだ。
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