「北限のサル捕獲・その後」
 2005年1月17日?2月28日まで「北限のサル」の捕獲が行われた。
対象は2003年に青森県が策定した「特定鳥獣保護管理計画(下北半島ニホンザル)」に基づいた人的被害を及ぼす問題個体。かみ砕いて言うと、人に危害を与え、また人家侵入を繰り返すサルを識別し、さらに人家側へオリを仕掛けることで、人的被害を与えるサルだけを特定して捕獲しようというもの。ニホンザルは群れで生活するので、人側に悪さをするサルだけを止めれば群れ全体に広がらない、という習性を狙ったもの。期間中、旧脇野沢村と佐井村と合わせてオスザル14頭が捕獲された。処分は薬物による安楽死。
 それから1年、合併後のむつ市脇野沢地域では人的被害はゼロ、農作物被害も大幅に減少、地域住民からも、「サルはおとなしくなった」、「姿を見る回数が減った」といった言葉も聞かれ、一定の成果として報告が出された。背景には巡視員の「追い上げ」強化、昨秋の山の豊作といったものもあり、さまざまな事柄を加味しなければならないが、少なくとも人的被害を含めた被害軽減につながったことは紛れもない。
サルの変化は食べ物変化ではじまる。人家や畑周辺で見つける「山にない新しい食べ物」から行動に変化が生じ、森の生活を人側に委ねてくる。山の変化も無視できないが、食性の変化がサル自身の変化になるのである。サルの生活はサルの食生活だと考えれば分かりやすい。「サルに餌を与えないように」というのは、「サルを人間側に誘導しないように」と同じ意味を持つ。人の食べ物を口にしたサルは、人への警戒心を解き、サルと人の境界を越えてくる。本来持っている生活域の境界をなくしてしまう。ニホンザルは環境順応能力の高い動物で、生活の環境をどんどん変える。その典型は私たち人間である。
 このあたりの生態を逆に利用して、人とサルの目に見えない境界を再構築できれば両者の良好な関係が出来上がるのでないだろうか。理想だと一笑される向きもあろうが、理想を下げれば現実はさらに下がる。それには時間と体力が必要。体制と経済力とも読み替えることができるが、少なくとも入口は見えていると考えている。
 森の中で悠々と暮らすかれらの姿は私たちに癒しや気分のゆとりを与えてくれる。森は、生き生きと暮らす動物が生活してはじめて森となり、私たちの生活にも大きな潤いをもたらしてくれる。人とサル、お互いの妥協点を見いだす努力は粘り強く続けたいものだと思っている。

終わり

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