「子育て・ニホンザル」
 ニホンザルは群れという単位で集団生活をしている。私たちの社会生活と似ているが、子育てはおもに母ザルが面倒をみるので異なるところもある。

 アカンボウの誕生は秋の交尾期の約半年後である5月。小さな両手両足を使ってヨチヨチ歩く姿はまさに可愛いの一言。しかしよく観察すると、じつは母ザルが歩かせているのである。生後2週間も経過する頃、お腹にしがみつかせていたアカンボウをそっと地面に置き、母ザルが少し離れる。するとアカンボウは、母ザルに近づこうと懸命に両手両足をばたつかせて、歩く。使い方が分かるはずないのだが、無意識にもがき、何とか前に進む。母ザルは慣れたもので、じっと見るだけで、手を貸さない。しかしその距離は1mもなく、転びそうになると、手を入れて体を支える。そのタイミングは絶妙である。そしてこの距離を少しずつ離してゆくのである

 一ヶ月も経つとアカンボウの歩行は大躍進し、母ザルからもどんどん離れ、近くにいる同級生と遊びはじめる。アカンボウはこのあたりから枝を掴んで木に登ろうとするニホンザル特有の行動も見られ、コドモザルという印象に変わってくる。

 つぎの展開は1?3才のコドモ集団への参加である。アカンボウは母ザルの存在を忘れるくらい遊びに夢中になる。が、大体大きなサルに苛められ、すぐ悲鳴を上げる。すると母ザルはどこにいても、一気に飛んでいって我が子を抱えて、苛めたサルを威嚇する。今度はコドモが悲鳴を上げる。そうなるとコドモの母ザルが飛んできて、母ザル同士のにらみ合いになって、親の順位で決着がつく。

 ニホンザルのいざこざはすぐ喧嘩になるが、すぐに治まる。そしてすぐ忘れてしまう。どんな大きなトラブルでも短時間で解消して、すぐ元の鞘に治まってしまうのである。相手を徹底してやりこめるような陰険な喧嘩にはならない。生活の知恵といえば一言で片づいてしますが、群れの巧みな知恵であろう。

 ニホンザルの子育ては、母ザルからスタートするが、成長と共に群れのさまざまなサルが絡みながら、群れという集団がサポートしながら進行する。この過程に群れで生活する役割と知恵が刷り込まれてゆくのである。

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