牛ノ首物語「・9
「アニマルトラック」
牛ノ首の遊歩道を歩くサル
・撮影年月日:05年3月25日、牛ノ首地域
 2005年3月、アニマルトラックに同行した。この観察法は、雪上に残るさまざまな動物の足跡を辿りながら生活の様子を想像しようと言うもの。3年前、友人の大学の先生の呼びかけではじめたもので、彼の授業の一端でもある。専門は地質だが、地上に生活する動物を知ることで専門知識に幅を持たせるという趣旨はなかなか面白い。
 今回の参加者は先生と女子学生2名。それと同じ日、我が家に宿泊したオーストラリアの青年。なぜかギター持参でやってきた。「ジェイスン」と自己紹介した彼はすぐ名前を覚えられた。この名は世界的にも有名なようだ。コースは、林道を経由して奥地にある牧場を縦断し、そのまま沢を登って、尾根筋を歩いてゴールが牛ノ首岬。全長約3000mの道程。前夜はサルとカモシカの話、そしてカンジキの使い方を入念に説明。平地で70センチの積雪はアニマルトラックより雪山歩きの心準備が必要。全員カンジキは見るのもはじめて、大丈夫かな?。
 当日は悪天候の合間をぬって晴れ間が見える。それぞれカンジキをひっさげて元気良く出発。牧場の手前でいよいよカンジキ装着。「ワイワイ」、「ガヤガヤ」、とても5名とは思えない賑やかさ。雪原を歩き出したらボルテージは上がり、小学校の遠足並みの騒音。私が動物だったら絶対に姿を隠す。
観察終了後、雪の上でカンジキを外す4名
・撮影年月日:05年3月12日、牛ノ首地域
 すぐに二ホンカモシカの足跡を発見。偶蹄目特有のふたつの蹄が雪上にくっきり。進行方向や小枝を食べ歩いた様子が、足跡から一目瞭然。途中から駆け足になっているのは、私たちの騒音を聞いたのだろう。その後も順調にさまざまな足跡。ウサギ、キツネ、オコジョなど小動物。「バタバタ」、突然静寂が破れ、1羽のヤマドリが目前を飛び去った。ヤマドリの出方にはいつも驚かされる。この頃には全員、カンジキもすっかり板についた。休憩時には全員で雪だるまつくり。大雪原に国際親善の雪だるまが3つ並んだ。やはり雪遊びは楽しい。休憩後、また真新しいカモシカの足跡。深い雪に苦労の後が伺える。足跡を辿って沢を覗き込んだら、いた。「なんでみつかるの?」という表情に見えた。先生がビデオを回し始めると、沢底から這い上がろうと一生懸命。重い体は簡単に登れない。前脚を入れるたびに前のめりになる。「がんばれ」、「もう少し」と若者たちから声がかかる。私はカンジキを貸してやりたくなった。いよいよ我々も沢登り。足を雪に絡め取られてなかなか進まない。カモシカの比ではなかった。途中出会ったキツネは軽々と雪の上を歩いて行く。カンジキ5人組は身を持って豪雪を体験した。後半は尾根を一気に歩き、牛ノ首近くでサルの声を聞きつけた。道路横断のサルたちの新しい足跡を観察し、見事に牛ノ首でサルの群れと遭遇。アニマルトラックは見事な成果でゴールイン。
 観察を終えて自動車道路に戻り、カンジキを脱いでいたら、背後に異様な水音。振り返ると、女子学生が長靴から水を流し出し、靴下を両手で絞っていた。湯気が上がっている。声をかけると、「大丈夫ですよ」と彼女は平然。ジェイスンも含めて将来が楽しみである。豪雪体験と若者たちの逞しさもみたアニマルトラックだった。
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