牛ノ首物語。・6
「アニマルウォッチングツアー」

 「北限のサル探検と鱈をたらふく喰うツアー」という話しが持ち込まれた。下北半島の冬場観光発掘の一環で、旬の鱈を食べ、カンジキを体験しながら北限のサルをウォッチングしよう、という企画。
 そもそも、野生のサルを、また二ホンカモシカを、それも時間が限られた団体のツアー。相談を持ちかけられてちょっと腰を引いたが、「最大の努力をする」という条件で引き受けた。
 記念すべき第1回目は2003年1月19日、前日にサルたちの寝場所を調べておいて、翌朝サルたちが動き出す前にアプローチしようと計画していた。前日は自動車道路から400mくらい沢を入った杉林で眠りについた。山歩きに慣れてない人でもある程度の時間で辿り着けるだろうと、翌朝の出会いに確信を持った。
 一夜明けた当日は好天に恵まれ、本来ならツアー日和である。が、天気が良すぎた。気温が上がり、サルたちが動き出す時間が予想以上にはやかった。参加者40名にカンジキを履いてもらい、とにかく沢道を歩きはじめた。季節柄厚着をした人が多く、すぐに汗が噴き出した。出会うはずの地点まで登ってもサルの気配がない。遠くでかすかな鳴き声が聞こえた。山頂付近だ。さまざまな条件を考えて遭遇は無理だと判断した。帰り道の足取りは重かった。幸い、別の場所で別の群を見つけ、何とかかたちになった。牛ノ首ではカンジキ体験の実践とカモシカの親子との遭遇もあり、参加者も大喜び。結果的にアニマルウォッチングの目的は果たせた。しかし、冷や汗もいいところだった。
 2回目は2月1日、サルたちは前日、牛ノ首農村公園の杉林で眠った。この日はバスを駐車場に到着させ、バスを降りると、そこで北限のサルが待っていた。1回目の冷や汗はどこへやら。はじめてみる生の北限のサルの見応えは十分。写真やテレビでしか見たことのない実物を目の当たりにしているのだ。参加者は狂喜乱舞は大袈裟だが、興奮しっぱなし。サル観察を堪能したあとはカンジキを履いてカモシカウォッチング。歩きはじめてすぐ、斜面の上に1頭のカモシカが立っていた。「グレー」だった。おそらく、私たちがサル観察していた時から我々を観察していたのだろう。グレーは余裕をもっている。
 フィールドスコープをセットしてグレーの顔をクローズアップにした。初めて見るカモシカのアップに、「かわいい」、「目が印象的」、「カッコいい」、さまざまな言葉が飛び出した。グレーもまんざらでもなかっただろう。家族で参加していた小学生のこどもが、瞬きもせず、じっとカモシカに見入っていた目が印象に残った。
 予定された2回のツアーは、鱈をたらふく喰って、自然を満喫して大成功のうちに終わった。牛ノ首にあらためて感謝。しかし次はどうなのか。いつも不安が消えることはないだろう。それも、自然だ。

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