「花見客」

 今年の春はスピード違反もいいところの早い訪れでした。フキノトウ、フクジュソウ、コブシ、カタクリ、そしてサクラ。大体、
早い遅いの差はあるものの、春を告げる花の開花に一応の順番がありました。ところが、今年はその順番がないに等しく、まとめて
一気に咲いてしまいました。真ん中にあたるコブシが咲く頃には、前述した花が全部咲いている状態でした。一時、山はずいぶん華
やかで賑やかなものした。でも、春が終わってみると、それらの花はあっという間になくなり、期間が短くて、今年の春は随分損を
した気分にもなりました。

 いつもは、ミズバショウが咲く頃はサルたちがこの場所にやってきません。いつもは、ミズバショウの花が終わり、葉っぱだけが
大きくなってしまって「花見」にはならないのです。サルたちは花を食べることはしませんが、芽が吹いた周りの植物を食べにくる
のです。今年は、早い春が幸いし、花の開花時期にサルたちが「花見客」になりました。

 

サクラも、やはり開花時期が早まり5月の連休前に満開になりました。いつもは連休中です。我が家の前にある「愛宕山」には数十
本のソメイヨシノがあって、村人の絶好の花見場所になっています。いつもは、連休中に「桜祭り」が開催され、事前に紅白のテン
トで彩られた大舞台が設営されます。そして、人々も大勢訪れ、1年に一度大にぎわいの場所になります。この愛宕山を1頭のニホ
ンカモシカが生活場所として使っていて、人々が居ない時を見計らって芝生などを食べる姿を目撃します。例年、桜が満開の時期に
は人々が出入りするため、そっと木陰に隠れて潜んでいるのですが、今年は早い春の訪れで、満開の桜の下を悠々と歩いていました。
もちろん、人々は平日のため、誰ひとりいません。この日は、私とニホンカモシカだけが満開の桜を楽しんでいました。

 ミズバショウを花見する北限のサル、満開の桜を花見するニホンカモシカは、今年の早い春の訪れのおかげで貴重な「花見客」と
なりました。異常気象の中、何が幸いするのかわかりません。

 

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いそやまたかゆき

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