「ツツジの死」

 ツツジが死亡しました。

 87年に脇野沢村に引っ越してきた時から、あしかけ14年の付き合いを

したメスのニホンザルのことです。年齢は推定で30才。私たちの年齢に

換算すると90才にあたり、寿命をまっとうしたことになります。

 3月のトピックスに「厳冬・ツツジ」を書きましたが、今年の冬は、

降雪量もさることながら気温の低い日が多く、私たちの生活面でも水道の

凍結など、かなり支障がありました。また、この地は風が強く、雪は、

降るという生やさしいものではなく地面から吹き上げる「地吹雪」そのもので、

目も開けていられない様相です。私はそんな冬を14回体験したのですが、

ツツジは30回も体験してきたのです。燃え尽きても不思議はありません。

 今年の冬、吹雪の最中、枝を慎重に両脚で掴みながら冬芽や樹皮を

かじり続けるツツジの姿に、自然に真っ向から立ち向かう野生の逞しさや

厳しさを、改めて感じていました。でも、よくみると、ツツジの歯は何本も

抜け落ちていて、太めの樹皮をかじっていませんでした。枝先の柔らかそうな

場所を選ぼうと、先端を目指すのですが、体が重い上に握力もない為、

登ることが出来ず、結局、口に入った僅かな量を、大事そうに何度も何度も

噛み続けていました。あの時は、早く春になってくれないか、と心から願いましたが、

ツツジの寿命が待ってくれませんでした。

 ちょうどいま、脇野沢村の桜が満開を迎えはじめ、山の新緑も、まさに目に

まぶしさを覚えるくらい鮮やかに芽吹きはじめました。さきほど、ツツジが

いた群を見てきましたが、それぞれのサルたちが、芽吹いたばかりのブナや

イタヤカエデの新芽を口に放り込んでいました。ひょっとすると、ツツジの

分までも…、と思いながら食べているサルもいるのかも知れません。

 森の中では、新しい命の誕生がはじまっています。きっと、ツツジの子孫も、

どこかで元気な産声を上げていることでしょう。そのうちまた、森の中で、

ツツジの面影を感じる予感がしています。

 

文責 いそやまたかゆき

 2001.5

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