「千年ヒバ」

 

 おそばせながら青森に「梅雨入り」が宣言された。平年から遅れること

1週間だが、山のサル、カモシカたちは、すでに夏の衣に着替え暑さ対策

万全である。いつもながら、私たちのカレンダーに頼る季節感とは違い、

見事な対応にほとほと関心させられる。

 先日、林野庁が「森の巨人たち百選」という全国の巨木百本を発表し、

その中の一本に脇野沢村のヒバが選ばれた。青森のヒバは、木曽のヒノキ、

秋田の杉とともに「日本三大美林」のひとつにかぞえられ、とりわけ

下北半島には、樹齢200、300年をはるかに凌ぐ「巨木」が残って

いる。また、標高差でブナなど落葉広葉樹と入り混ざり、奥の深い森を

培い、生物の多様性にも大きな役割を担っている。

 脇野沢村の「千年ヒバ」は、その代表的な巨木であり、長い風雪に耐

えながら「北限のサル」「ニホンカモシカ」をはじめ、さまざまな生命

を育んできた。さきごろ、地元の小学校の生徒が総合学習の一環として

「千年ヒバ」に会いに行った。年齢10才の人間と何世紀も生きてきた

巨木の出会いは興味あるものであった。子ども達は、ただただ感心する

ばかり、いや「させられる」といった言葉がぴったりするほど、歴史的

な時間を自分の時間としてとらえることが出来ない様子だった。しかし、

帰り際、実際に何年ものあいだ「北限のサル」たちが「千年ヒバ」の

枝で夜眠ったり、体を寄せ会って寒さから身を守ってきた話しをしたら、

一瞬、こどもたちの目の奥に輝きがはしった。おそらく樹齢は千年ま

で経ってないだろうが、まさに、歴史と現在の交差点であろう。

文責 いそやまたかゆき

2000.7

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