「クロ」

 

 6月に「ムラサキ」と「マナブ」という事で文章を書きました。

サルにしてもいろいろと名前が出てきますが、

「本当に顔が分かるのですか?」という質問を受けます。

 そこで、今回はそのあたりのお話しをしようと思います。

難しい言葉を使いますと「個体識別」といいまして、実際に、容姿

などの特徴を観察記録して、相手を覚え込んでしまいます。

覚え方は人それぞれですが、右耳の中に白っぽい毛がどんなかたち

で何処にあるか、といった細かい特徴を見つける得意技を持ってい

る人…。体毛の色、角の生え方、あるいは、顔の中のキズなどを細

かくノートに書き込む人…。さまざまなものが特徴になりますが、

気をつけなければならないのは、体毛が長いとか、黒っぽい、白っ

ぽいという特徴は、実は体毛は冬と夏とで毛変わりをするし、色は

、天候、季節、または背景で、色調が変わって見えるということが

あります。暗いスギ林の中で見るのと、真っ白な雪の背景でみる

状況では、かなり違って見えます。

 私の場合は、あまり細かい事柄を見ません。写真撮影が中心にな

ると言う事もあり、ファインダーを通して観察する事が多く、漠然

と全体の雰囲気で覚え込んでしまいます。要は、回数です。

 例えば、学校などで、新学期にクラス変えのあと、いつのまにか

友人が出来るのと同じです。最初は、覚えられなかった人も、背中

を見るだけでも分かってしまいます。無意識のうちに「個体識別」

をしているわけです。

 さて、「クロ」ですが、このカモシカは、まさに、黒いのです。

前の話しと矛盾していますが、彼女(メス)は本当に黒いのです。

強いて細かい事を言うと、少し左角が外側を向いて生えています。

言い忘れましたが、彼らの角は生涯生え変わらず、一頭ずつ角度、

傾きなどが違います。したがって、何かの時に折れてしまえば、そ

れっきりです。そうなれば、どんな状況でも見間違える事はなく、

観察者は嬉々として喜びます。

 しかし、こんな人(カモシカ)の不幸を待ち望む性格の観察者は

、野生動物たちの天敵かもしれません。

                    

  いそやまたかゆき

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TAKAYUKI.ISOYAMA 1998