「春よ来い」

 

 今年の冬もあとわずかである。南の便りには、梅がほころび、ウグイスのおまけまで

ついている。下北半島の積雪はもともと少なく、青森県内では、八甲田山系や岩木山麓周辺

に多雪地帯がある。市街地では、野辺地町、青森市、弘前市あたりである。

先日の新聞に、すでに今年度の除雪予算を使い果たし「あとは降らないように、神頼み」

と言う弘前市長のコメントがでた。こうなると、ロマンチックな「雪」どころではない。

脇野沢村でも、最大80センチを越える積雪があり、私の10回の越冬のなかでも、

豪雪?の年になった。写真の撮影でも、久しぶりに「カンジキ」を使う回数が多かった。

サルは比較的体が軽く、ササに積もった雪の上でも軽々と歩いて行くが、うっかり、

そのままついて行くと、途中で腰まで埋まってしまう。ちょうど落とし穴である。

そうなると悲惨で、もがくほど脱出できない羽目になる。カメラも双眼鏡も雪まみれになり、

写真どころではなくなる。見上げると、まわりのサルたちが不思議そうに眺めているが、

その表情が「面白がっている」ように見えるのは、被害妄想というものだろうか…。

こどもの頃、「蟻地獄」に落ちた蟻を面白がって見ていた事を思いだした。

もちろん、蟻が私で、サルがこどもの頃の私…、である。

 ニホンカモシカにとって、積雪は大変な苦労を強いられる。急峻な崖は、太くて

たくましい脚で移動を得意とするが、積雪が深くなると、かれらの短い脚では歩行が

できなくなってしまう。世間でいう「カモシカのような足」は、間違ったイメージで

とらえられている。また、地表の下草を採食する事も困難になり、

生活できる場所が限られてしまう。

山を歩いても、いつもと較べると雪上にカモシカの足跡が少なく、

不自由な生活の様子がうかがえる。

4年前、少し雪が多かった時期があり、沢に落ち込んでそのまま夜を過ごし、翌日死亡

したカモシカを観察した。様子から、自力で這い上がれず、両脚が氷つき、一晩で体力を

奪われた結果であった。何年か一度の豪雪や寒波は、実は、自然界の淘汰だともいわれる。

本や話しで知る限りではあまりピンとこないが、現実に直面すると、自然には私たちが

計り知れない「もの」があることを、改めて思い知らされる。ときに、人は、

自分ひとりだけの力で生きているような錯覚に陥ることがある。私たちが自然の現象に

直面すると、人の力量の程度に気付かされるが、時がたてば忘れてしまうものである。

しかし、サルやカモシカたちが油断したら、そのまま「死」である。

 たまには、「豪雪・寒波」も必要なのかも知れない。ただ、いつもはイヤだけれど…。

 

いそやまたかゆき

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TAKAYUKI.ISOYAMA 1998