「鯛島とサル」

  年が明けてから気温が低い日が続いている。気温がマイナス10℃を

超えた日も何度かあり、積雪も26日現在で60cmに達し、本格的な冬になった。

エルニーノの暖冬予想に反して、近年にない寒さと雪の多い冬になっている。

 厳冬期の「北限のサル」たちの様子は、よくテレビなどでも放映されお馴染み

の人も多いと思う。雪を全身に浴びながら、もくもくと木の皮を噛り続けるあの姿である。

確かに、雪のなかの姿には、見慣れている私でも、いまでも、心を揺り動かされる時がある。

しかし、撮影、観察などで何日も付き合っていても、雪の中の「北限のサル」には

なかなかお目にかかれない。そこそこの降雪では、雪の上を歩いたり、雪をかぶり

ながら採食したりもするが、先日のように、昼間でも気温が上がらず、

大雪になると、かれらはスギやヒバなどの針葉樹の中に逃げ込んで、

動かなくなってしまい、声ひとつ出さなくなる。

そうなると撮影はお手上げで、私たちは手も足もでなってしまう。

気温が上がって、また、下に降りてくるのをじっと待たなければならず、

その時の寒い事といったら言葉には言い表せず、本当に辛いものである。

私たちが、寒い日は布団やコタツから出たくないのと同じであるが、実は、

惰眠をむさぼったり、怠惰な生活をすることは、余分なエネルギーを使わなくて

すむのである。私たち人間社会は、ルールというものがあり、仕方なく動かされますが、

かれらは「効率よく生きる」ことを優先させる。風をともなって気温が下がれば、

風が当たらない場所へ逃げ、喰うよりも、空腹に耐えて辛抱する

生活様式に切り替える。とにかく、無理をせず、環境の変化に対応させる。

かれらの「北に生きる知恵」は、実に単純なものである。先日、穏やかな

冬の晴れ間があり、脇野沢村を象徴する「鯛島」を望む海岸に出て、一時の

冬期休暇を楽しんだかれらだが、今日は、また吹雪いている。きっとまた、

どこかのスギ林にでも逃げ込んで、省エネ生活を決め込んでいるだろう。

かれらには、「地球温暖化防止会議」の必要はなさそうである。

 

いそやま・たかゆき

 

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TAKAYUKI.ISOYAMA 1998