「ススキとハナレザル」

 

 山頂から紅葉(この地域ではブナ、ミズナラが多く、ほとんど黄色)も始まり、

いよいよ、森の中は華やかな季節をむかえる。

この時期、群れに属していない「ハナレザル」という単独行動をしているオスザルが

群れの周辺に出没し、恋の駆け引きに一段と賑やかさをます。

 従来、サル社会では、力の強い「ボスザル」が群れのメスを支配し、独裁的な群れ

社会だと語られてきた。

しかし、実際はそうではなく、「ハナレザル」を含んで、複数のオスがメスとつがい関係を持つ。

むしろ、群れにいるオスより、「ハナレザル」の方が部がいいのではないかと思う時がある。

 この時期、群れオスは、とにかくメスを見張り続ける。

メスは、ときおり、別の方向に視線を送り、その先には「新顔」のオスが樹木の間に

見え隠れしている。時々、口をパクパクさせ、何やら会話をしているようだ。

簡単に接触できないペアーだが、チャンスは訪れる。

群れの中にトラブルが起きたり、他の「ハナレザル」が群れに近づいた時など、

仕方なく、群れオスがその場を離れる。

その時である。メスは一目散に「新顔」の方へ駆け走る。もちろん、何度も後ろを振り

返りながら…。そして、事を済ませ、何喰わぬ顔をして群れに戻ってくる。

ところが、どっこい。

群れオスが待ち構えている。正面に立ちふさがり、肩を怒らせて威嚇をする。

すると、若いメスは「泣きっ面」という、いかにも情けない表情になり、

事をばらしてしまう。もちろん、オスから攻撃され、時には傷を負うこともある。

それにひきかえ、ベテランのメスは、そこは経験。まったく、無視。

オスの脇をすり抜け、こどもを抱え込んで、さっさとグルーミングを始める。

それで、勝負ありである。

 こう書くと、ちょっと誤解されてしまうかも知れない。

しかし、新しい遺伝子を受け、強い子孫を残すための繁殖戦略だと思えば、ちょっと、

メス達の努力も理解してもらえるかも…。

 秋は、同じオスとして、少々、悲哀を感じる季節でもある。

 

いそやま・たかゆき

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TAKAYUKI.ISOYAMA 1997