「水浴するサル」

  ある暑い夏の日、いつものようにサルを観察していたら、脇野沢川の上流で、
気持ち良さそうに数頭のコザルが水浴を楽しみ始めました。

あえて、水泳としないで水浴としたのは、実は、下北半島に生息している

「世界最北限のサル」が、海で泳いだのを観察された事がないのです。

私も、10年間、細かく観察していても、海岸付近を歩いたり、漂着物を拾っているサルの

目撃、記録はあるものの、「泳ぐサル」を見ていません。

 この日は、5頭のサルが水の中に入り、確かに、水泳はしていましたが、僅かな距離で、

アットいう間に足をつけ、その長さも数メートルでした。

大体が、川岸からそっと足をいれ、対岸まで勢いをつけてたどり着いという繰り返しで、

泳ぐと言う雰囲気ではありませんでした。ただ、中には、頭を水中にいれ「潜るサル」

もいましたので、水泳を認定してもいいのかな、という気はします。

サル達の様子をみていると、水に入っているのは、2〜5才までの若いサルだけで、

他の年寄りや、1才未満のサルは、ただ、じっと見ているだけでした。

これは、他の群がため池で水浴した時もまったく一緒で、とくに、年寄りのサル達は、

楽しんでいる若いサルの様子を、ただ、岸から眺めているだけでした。

 私たちヒトの世界も、ある程度年齢を経てくると、新しい事や、冒険をしなくなり、

思わず、「ヒトもサルも一緒だ…」と呟いてしまいました。

新しい文化は、やはり、新しい年代から生み出されるものだと、この時、実感しました。

 いつの日か、下北の荒海で、「世界最北限のサル」が泳ぐ日があるのだろうか…、

あるいは、絶対に海に入らないのか…、もし海で泳ぐのなら、それはどんなサルなのか…。

いろいろ思いめぐらしながら、夏の日、「水浴するサル」を見ていました。

 ちなみに、彼らの泳法は、まさに「犬かき」そのものでありました。

 

いそやま・たかゆき


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TAKAYUKI.ISOYAMA 1997