いそやまたかゆき
青森県下北半島は、東は太平洋、北は津軽海峡に面し、「まさかり」の
かたちをしている特異な半島である。枝の部分にあたる南方は細く絞られ、
動物の行き来がなく、生態系的には、島と同じような状態になっている。
私が住んでいるむつ市脇野沢は、そのまさかりの刃の下の部分に位置し、人口
2500名程の小さな地域である。冬には「真鱈(まだら)」が獲れ、別名「鱈の里」
とも呼ばれ、戦時中に戦闘機を二機献上したという輝かしい誉れがある。
半島内には、さまざまな野生動物が生息しており、中でも、ニホンザルは世界
で最も北にすむサルとして国内外に有名である。
また、ニホンカモシカについても、じっくり観察できる場所もあり、まさに、
自然の宝庫そのものである。私の恒久テーマである「森の中で」は、
このフィールドで展開している。四季を通して、ブナ、ヒバなどの森の中で
暮らす彼らと行動を共にしていると、私の「人間の時間」が消失し、彼らと同
じ時の流れを持つことが出来る。空腹になれば喰い、満腹になって眠くなれば
眠る。寒くなれば、皆で身を寄せあって暖をとり、暑い日は、木陰でひたすら
昼寝をむさぼる。開けても暮れても、飽きることなく、同じことの繰り返しで
ある。そんな森の中で、一瞬、木漏れ日に浮かびあがる彼らの姿に、感動の
連続である。そこに、自然への畏敬の念を抱かずにはいられない。
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TAKAYUKI.ISOYAMA 2005